働くことのそうだんじょ

いつだって誰だって新しいことを始めるには勇気が必要です。だからこそ最初の一歩は尊いもの。サポートステーション(以下、サポステ)を通して就職を遂げた柴山さんと本多さんの場合、最初の一歩を後押しした理由は何だったのでしょう?

「親の定年退職が数年後に迫ってきていて……その前には仕事を決めないと」と柴山さん。「まあ、世間一般で就職するのが普通の年齢でしたから」と本多さん。柴山さんは話し終わると穏やかな笑みをうかべながら、本多さんは緊張しているのかひとつも身動きしないまま答えてくれました。

それぞれのきっかけを抱いて、今では日清精工という同じ会社に勤める「同僚」になったふたりですが、サポステを訪れた経緯もそれぞれ異なります。

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「大学4年生から就職活動を始めたんですが。始めたといっても就職説明会と会社訪問に1回ずつ行っただけで次のアクションに踏み出せなくて。あまり積極的に就活をやっていなかったんです。卒業してから毎日家で過ごしていたらほとんど1年経ってしまった」という自他ともに認めるおっとり屋の柴山さん。インターネットで検索をして、辿り着いたのがサポステだったそう。

はじめて利用したときの様子を聞いてみました。「そんなに深く考えず、とりあえず行ってみたんです」サポステでは利用者は、カウンセリングやビジネスマナーの研修を受けたり、ボランティアや仕事体験を行う流れが一般的。しかし柴山さんは、登録してすぐに希望の職種で仕事体験の枠にたまたま空きが出たため、即チャレンジ。高校から大学まで工学系の学校に進みものづくりの分野に興味があった柴山さんは、企業側とのマッチングもスムーズに進み、体験で入った株式会社日清精工にそのまま就職して早くも2年が経つそう。

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一方本多さんはどうでしょう?「1、2年くらいプラスチック製品の検品などを行う内職を行ってたんです。でも家の外で働くきっかけがなくてどうしようかなと思ってました」アルバイトの面接を受けてはみるものの、緊張してなかなか本領を発揮できないという本多さん。「サポステはカウンセラーの人が優しいんです。確か…『応援するよ』って言ってくれた気がします」本多さんが少し照れ笑いして、ようやく緊張していた顔が少し緩みました。

本多さんはビジネスマナーなどの研修を受けて、自宅から通いやすい同社で仕事体験を行い、そのまま就職することになりました。サポステに通っている間、途中骨折をしてしまい、3ヶ月ほど通えない時期もあったそう。けれど、サポステはよほど通いやすい雰囲気なのかそのままフェイドアウトするでもなく、怪我が快方に向かうとまたサポステに通ったそう。

ふたりとも、もちろん就職したくなかったわけではありません。むしろ就職したいけれど、そのきっかけをどう掴んだらいいのか、わからない。そんなもどかしさを感じました。淡々とした口調からは、サポステに訪れた後はトントン拍子にここまで来たような印象すら受けましたが、はじめての就職。どうやってはじめての仕事を「自分の仕事」にしていったのでしょう?

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「大学の勉強って、全然役に立たないですね。まずは先輩のやり方を見て、教えてもらって」と柴山さん。「最初はさっぱり(わからない)でしたね。いろんな人に聞きまくりました」。柴山さんも本多さんも、それぞれ手取り足取り教えてもらえるわけでもなく、わからないところはタイミングを見計らいながら、先輩に聞いてひとつずつクリアしていったそう。「ちゃんと確認すればできる仕事ですが、慣れないうちはあせってミスして怒られて。トラウマになりそうでした」と本多さん。

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仕事に慣れた今でも、残業が続くことも多いといいます。集中力と根気のいる仕事を続けるモチベーションは何でしょう?「仕事は、やるしかないですからね。自分はあまり悩まない性格なんです」と柴山さんはいいます。まるで止まっていた時計の針が動き始めたように人生が軌道に乗り始めたよう。

働きはじめて一番変わったことは?と尋ねると「家にお金を入れられるようになったこと。あと、今までは家族と過ごす時間が長かったけど、会社でいる時間のほうが長くなったことですかね」と柴山さん。金型加工の仕事は、日清精工の場合ひとつひとつが分業になっています。自分の仕事が滞れば、全体の流れが滞る。まさに会社になくてはならないメンバーのひとりとして、柴山さんは着実に自分の居場所を築いている様子。

「サポートステーションは、とにかく1回行ってみるといいんですよ。そして、次の予約をちゃんととること。行かなければ、ずっと仕事が決まらないままですから」と淡々と語ってくれました。

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本多さんはどうでしょう? 「自分の欲しいものが買えるようになりましたね。車も買いました」日曜にはドライブに行ったりするのでしょうか。そんな返事を期待して尋ねてみたところ「日曜は疲れて寝てますね」と、やはり緊張した面持ちで答えてくれました。けれどそれは仕事に没頭している証拠。文句ひとつ言わずに残業して「こちらが心配になるくらい」と社長からお墨付きをもらうふたり。寝て過ごす日曜日は決して虚しい過ごし方などではなく、頑張りの勲章に思えます。

それでも、「明日から会社かと思うとちょっと気が重いんです」と本多さんはいいます。隣で話をだまって話を聞いていた社長さんがすかさず「俺もやで」と突っ込みました。そう、働く誰もがちょっぴり憂鬱を抱えているもの。でも本多さんは憂鬱に負けない夢も持っているのです。「上を目指すことです。今使っている機械は金属の平面加工をするフライス盤、NC加工機、放電加工機。でも、いま会社にある機械をすべて使えるようになりたいんです」とまっすぐ前を見て本多さんは話してくれました。

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日清精工では各機械にそれぞれ担当者がいて、メンテナンスを受け持っています。柴山さんはマシニング、本多さんはフライス盤が担当。いずれもミリ単位の調整が必要な精密な機械。ふたりがやりかけていた仕事に戻ったとたん、さっきまでの口数少なく緊張した面持ちが一変しました。ハンドルを回して寸法を測る慣れた手つき、機械の行方を見つめる真剣な眼差し、そしてよく手入れされたそれぞれの機械。まるでその場所にいることが当然のようにふたりはすっと、それぞれの持ち場におさまり新しい景色を描き始めます。

もしかすると、わたしが見たのは町工場ならどこにでもある何気ないシーンかもしれません。けれどもふたりのいる場所にはうっすら光が差しているように、少し眩しく見えました。それはきっと、慣れない仕事に右往左往しながら、少しずつ牙城を築いた証拠。誰も奪うことができない尊い場所。

「仕事を通して社会に自分の居場所を築くことができるんだよ」。無言で働くふたりの背中を見ていたら、そんな大切なメッセージを受け取ったような気がしました。

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「来てくれてありがとう。」
そんな気持ちで待ってます。
大阪府若者サポートステーションスタッフ
カウンセラー 森本
就労体験コーディネーター 上田
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柴山 祐二さん 本多 満さん
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株式会社日清精工 代表取締役社長
岩谷 清秀さん
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